毎週火曜日12:30、英国からの新着アンティーク公開。

[その1]さすらいの猫、チロ。

今日から、ドリプレガーデンの猫たちのことを書こうと思いました。

なんといっても、トップバッターは、絶対に忘れてはいけない、チロ、です。
僕が人生でいちばん影響を受けた猫、といってもいいかもしれません。

この房総半島の山の中に引っ越してきたのが、今から15年前。
その2年前に土地を購入して、2年かけて開墾。

やっと、家を建てて、こっちに移住したのが、つい昨日のことのようです。
その年、イギリスに初めて買い付けに出かけて、帰ってきたら、チロがいたのです。

2007年の冬のある日、ボロボロになってやってきた、チロ

顔中、傷だらけで、ガリガリに痩せていて、僕たちに近づこうとしません。

ご飯を与えたら、びくびくしながらくわえて、
一目散に森の中に逃げてしまう、そんな猫だったんです。

何度か、ご飯を与えているうちにやっと近づいてこれるようになって、
すぐに病院に連れて行きました。そして、2週間もしたら、この通り。

病院に連れて行ってすっかりきれいになった、チロ。

元気になったチロは、しばらくすると、奥さんを連れてきました。

タマちゃんです。

いまでも、奥の馬小屋の辺りで一人でひそかに(だけどしたたかに)生きています。

その後、子供が生まれました。
コチロ(男の子)と、ココチロ(男の子)と、ハーマイオニー(女の子)です。

コチロはすぐに人になれて、僕たちと遊べるようになったのですが、
タマちゃん、ココチロ、ハーマイオニーは、野生が強くて、絶対に人には近づきません。

そんな家族のリーダーとしてチロはたくましいお父さんでした。

左が長男のコチロ。右はお父さんのチロ。

上の写真は、コチロとチロです。お父さんのチロのほうが小さいのね。

チロは体は小さいのですが、男気がとても強く、他の猫や動物たちに敢然と立ち向かっていくのです。

そして、ある日、荒野の暴れん坊の異名をとる、ニャジラがやってきたのです。

そして、一ヶ月ほど、家族を守るチロとの壮絶な戦いの日々が訪れます。

自分の体の倍くらい大きなニャジラにまったく臆せず立ち向かっていくチロ。
朝に夜に、叫び声が森中にこだまします。

せつさんも心から心配していました。

ところが、不思議なことが起きました。
あれほど、喧嘩に明け暮れていた二人が、いつのまにか。

すっかり仲良くなったチロとニャジラ。

なんということでしょう。すっかり仲良くなってしまったのです。

はたから見ていても、思わず笑ってしまうほど、幸せそうな二人なのです。

それからというもの、ニャジラも他の猫たちをいじめることもなくなりました。
ドリプレの猫の森に、やっと平和が訪れたのです。

ところが、幸せな時間は長くは続きませんでした。

チロの最後の写真

この写真が、チロの最後の姿となってしまったのです。

僕がチロのこの写真を撮った次の日、
ガーデン作業をしていた石井さんが息を切らして僕の元へ駆け込んできました。

「チロがね、チロがガーデンの奥で横たわっているの」

あわてて現場に行ってみると、すでにチロは冷たく固くなっていました。

よく見ると、そこはイノシシが出入りしていた獣道でした。
チロはなんといっても男気が強いので、黙っていられなかったのだと思います。

ガーデンや仲間の猫たちを守るためにイノシシに立ち向かったのです。

その結果・・・・・。

それでも、外から見ると、きれいな顔と体でした。
初代ガーデンパトロール隊の隊長らしい最後でした。

チロのお墓の上で動こうとしない、ニャジラ。

チロの死を受け入れることができなかったのが、ニャジラでした。

せつさんがこさえてくれた、チロのお墓の上を何度も何度も行ったり来たり、
そして動こうとしません。
3日間、何も食べず、ずっとチロのお墓のそばにいました。

それからというもの、ニャジラは悲しみをまとった猫になりました。

お客様のお膝の上で、在りし日の、チロ。

お客様に抱っこされるのが大好きでした。

冬、暖かい落ち葉の中で。

らくちんな場所を見つけるのが得意でした。
愛するものを守るために命を落としたチロから教わることは、本当に多いです。

なんか、涙がでちゃった。

次回は、ニャジラの物語です。